前鋸筋を鍛える効能をご存じですか?前鋸筋を鍛えるとパフォーマンスの向上や肩こりの解消など身体に良いことがいっぱいあります。前鋸筋を鍛える方法はいろいろありますが、今回は「素振り」による方法を紹介します。筋トレやストレッチとは一味違う「素振りトレーニング」で動ける身体を手にいれましょう!
前鋸筋とは?その役割と機能
前鋸筋とは脇腹にある筋肉で、肩甲骨の動きをスムーズにして、
肩関節の動きを円滑にする役割を持っています。
のこぎりのような形をしているため、前鋸筋と呼ばれています。
肩甲骨を前外方向に引き出す作用があり、パンチを打つ動作で重要な
働きをすることから別名「ボクサー筋」とも呼ばれています。
ほかにも肩甲骨や肩関節などの安定性を向上させる働きもあり
これにより肩全体の動きが良くなります。
前鋸筋と運動機能の向上
前鋸筋を鍛えることにより運動機能が向上します。
それは前鋸筋には次のような機能があるからです。
1 呼吸に関する機能
2 肩を下げる機能
3 体幹を安定させる機能
それぞれ説明しますね。
呼吸に関する機能
前鋸筋は肋骨を上にあげる機能があり、息を吸う時に胸郭を広げる働きをします。
深い呼吸をするには欠かせない筋肉です。
肩を下げる機能
前鋸筋が働くと、肩をすくめている三角筋や僧帽筋などの表層筋の働きを弱めることができ
肩を下げることができます。
肩が下がると肩にある深層筋(ローテーターカフなど)が働きやすくなり、肩関節が安定します。
体幹を安定させる機能
前鋸筋は外腹斜筋と内腹斜筋とつながっています。
その内腹斜筋はインナーマッスルである腹横筋とつながっており、
前鋸筋が動くとインナーマッスルが活性化されて体幹が安定します。
体幹の安定はパフォーマンスの向上に必須な条件です。
前鋸筋を鍛える「素振りトレーニング」
前鋸筋を鍛えるトレーニング方法はいろいろありますが、
今回は「素振りトレーニング」を紹介します。
素振りトレーニングとは剣術の稽古方法を応用したものです。
ご自宅に剣に代わるもの(木刀、竹刀、棒切れ)がなくても
できるように「徒手」での方法も紹介します。
素振りトレーニングの基本
前鋸筋を鍛えるためのトレーニングですので「剣を振り上げて振り下ろす」が基本となります。
いわゆる正面素振りです。斜め素振り(袈裟斬り)や横払いでは行いません。
素振りトレーニングの実践方法
素振りトレーニングの実践方法です。
素振りトレーニングは「剣を振り上げて振り下ろす」単純な動きですが
いくつかのポイントがあります。
肘は伸ばしたまま
古流剣術などでよく見られる素振りですね。
剣道のように「肘を曲げながら振り上げ、肘を伸ばしながら振り下ろす」
素張りではありません。
肘は終始伸ばしたまま行います。
これは前鋸筋に効率よく刺激を与えるためです。
とはいえ肘を伸ばしきった完全伸展でなくてもOKです。
完全に伸ばしきると肩に力が入りすぎますので
慣れるまでは「軽く肘が曲がっている」くらいでも結構です。
いずれにせよ素振りの途中で肘の角度を変えないようにすることが
重要です。
足は自由に
足は特に決まりは有りません。
前後左右に開いても結構ですし、閉じてもOKです。
椅子に座ったままでも大丈夫です。
ただし、あぐらでの素振りは腰に負担がかかるのでやめましょう。
前鋸筋を鍛えるには下半身が安定していたほうが効率的です。
肩を上げない
「肩を上げない」
このポイントが一番重要といっても過言ではありません。
前鋸筋は肩を下げる機能がありますので、逆に肩が上がっているということは
前鋸筋の働きが弱いということになります。
とはいえ初めは感覚がよくわからないと思いますのでコツを紹介しましょう。
肩を上げないコツ それは「耳と肩の間隔を縮めない」です。
押さえておきたいコツ!「耳と肩の間隔を縮めない」
「耳と肩の間隔を縮めない」
今一つよくわからないと思いますので少し練習してみましょう。
床に仰向けに寝て腕が床と垂直になるように両腕を上げます。
その状態から腕を天井方向に挙げて伸ばしていきます。
腕が伸びていくにつれて肩甲骨が床から離れていきますね。
一旦腕を降ろします。
この時に自分の耳と肩に意識を向け、その間隔(距離)を覚えておいてください。
また、同じように腕を天井方向に挙げて伸ばしていきます。
この時に自分の耳と肩との間隔はどうなっているでしょうか?
どちらかといえば離れていくようであれば正解です。
うまく前鋸筋を使って腕を挙げています。
もし縮まるという方は前鋸筋ではなく肩甲骨で挙上しています。
意識的に離すようにしてみてください。
このコツは正しくできているかのバロメーターとなりますので、
トレーニンング中も忘れずに。
また、この練習自体が前鋸筋トレーニンングですので素振りトレーニングと
併せて行うのも良いと思います。
剣(木刀・竹刀など)を使った素振り
剣(木刀・竹刀など)を使った素振りです。
剣を握り両手を前にして構えます。
いわゆる正眼の構えです。
この時に両腕を突き出すようにします。
剣の振り上げ
肘を伸ばしたまま剣を振り上げていきます。
耳と肩の間隔が縮まってきますが前鋸筋を使って間隔を保ちましょう。
腕を前に突き出すようにしてください。
この動きが前鋸筋を刺激します。
両手が肩の高さくらいになったら肩が詰まった感じになり、
それ以上上がらなくなってきます。
そこでまで来たら耳と肩の間隔が縮まっても良いのでそのまま振り上げます。
この時に前鋸筋(脇)の力を抜かない様にしてください。
両手が目の高さくらいまで来たら振り上げは終わりです。
剣の振り下ろし
剣の振り下ろしです。
前鋸筋(脇)で両腕を引き下ろすようにして振り下ろします。
注意するポイントは
「動きの初動で肩を下ろさない」です。
振り上げる際に
「肩以上の高さになったら耳と肩との間隔が近くなっても良いので振り上げる」
と書きました。
そうすると順序的に振り下ろしはまず肩から下ろしたくなりますがそうではありません。
それは「前鋸筋が肩を下げる機能」と持っているからです。
前鋸筋が働けば肩は下がるので動きの初動から前鋸筋を使って剣を振り下げるようにします。
剣が最初の位置までくれば終わりです。
徒手で行う素振り
徒手で行う素振りです。
徒手で行う素振りは基本的には剣を使った素振りと同じです。
違うのは「負荷が少ないということ」と「両手の形を選ぶことができる」という点です。
負荷が少ない
木刀や竹刀などがないため負荷が少なくなり、前鋸筋が動いている感覚は
判りづらくなります。
しかし、負荷が少ない分、自分の感覚を研ぎ澄ますことができるでしょう。
両手の形を選ぶことが出来る
徒手での素振りでは両手の形を選ぶことが出来ます。
実際に剣などを持つのとは違い、両手を合掌させることもできますね。
(これは正中線を意識させるには非常に良い形です。)
指を組んでも良いですし、両こぶしを付けても、もちろん剣を持って
いるように両こぶしを離しても良いです。
前鋸筋トレーニングがもたらす全身のメリット
前鋸筋トレーニングがもたらす全身のメリットといえば
やはり「姿勢の改善」ではないでしょうか。
肩まわりが安定して「猫背」や「巻き肩」が解消されますし、
前鋸筋が働くとお腹のインナーマッスルが活性化して体幹が安定します。
またこれらの副次的なメリットとして「肩こりの解消」や「お腹痩せ」
なども期待できます。
定期的なトレーニングの重要性
前鋸筋は普段は意識することの少ない筋肉です。
ですので、一回のトレーニングで多くの負荷をかけるよりも
少ない回数・負荷で良いので定期的なトレーニングを心掛けたほうが
効果があがります。
そして日常の動作でも前鋸筋が使われるようになれば言うことありませんね。
前鋸筋を痛めないための心得
普段から前鋸筋を使えていない方は前鋸筋が固くなっています。
特に現代社会では長時間のデスクワークやスマホ利用による姿勢不良が
常態化していますよね。
そのような方はいきなりトレーニングするよりも、ストレッチなどから
始めるようにしてください。
ストレッチのやり方は別記事にて紹介します。
まとめ
今回の記事では前鋸筋を鍛える「素振りトレーニング」を紹介しました。
素振りトレーニングは前鋸筋に焦点を当てたトレーニングです。
前鋸筋を鍛えるメリットは非常に多く
1 肩関節の動きを円滑にする
2 肩甲骨まわりの安定
3 運動機能の向上
4 姿勢の改善
など様々です。
素振りトレーニングは腕を振り上げて振り下ろすという
簡単な動作ですが、効果的に前鋸筋を鍛えることができます。
木刀や竹刀などを持って良いですし、徒手でもOKです。
ただし、ポイントを忘れずに!
一番のポイントは「肩をあげない」でした。
そのためのコツは「耳と肩の間隔を縮めない」でしたよね。
「素振りトレーニング」
簡単な動作ですが実は奥深い動きです。
ぜひ、継続してトレーニングしていただきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この記事が皆様の身体創りの一助になれば幸いです。
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