武道の重心論争に終止符を!つま先、踵ではない「地面を押し込む」感覚

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「重心はつま先に置くべきか、それとも踵(かかと)に置くべきか?」武道を志す者なら一度は直面する問題ではないでしょうか。ある指導者は「居着かないようにつま先立ちになれ」と言い、別の指導者は「踵を浮かせるな、大地に根を張れ」と言います。この矛盾に戸惑い、自分の立ち方に自信を持てなくなっている人も少なくないでしょう。しかし、多くの議論で見落とされている視点があります。それは、重心の「位置」という静止した結果よりも、「地面をどう捉えているか」という動的なプロセスこそが重要だということです。今回は、物理的な視点と身体感覚の両面から、この「動的なプロセス」ついて迫ります。

つま先と踵、それぞれの役割を再定義する

まず、よく語られるメリット・デメリットを「位置」ではなく「力の方向」として整理してみましょう。

つま先重心

つま先(正確には中足指節関節付近)に意識を置いて押し込むと、実は体は後方へ移動します。
つま先は脛骨(すねの骨)の前側に位置するため、ここに荷重することで「体を後方に推移する力」が発生するのです。
前方への爆発的な推進力を得ようと、地面を「斜め後ろに蹴り出す」ことは、ある意味では反対の動きをしていることになります。
(この「蹴り出し」は、一瞬ではありますが空白時間ができやすく、武道や対人スポーツなどではあまり好ましくない動きとなります。)

踵重心

一方で、踵に意識を置いて押し込むと、体は前方に移動します。
踵の骨は脛骨(すねの骨)の真下より後ろに位置するため、ここに荷重することで「体を前に推移する力」が発生するのです。
また、脛骨から踵骨の間には関節がありますが、どれも可動域の少ない関節なので、自分の体重と筋力をロスなくに地面へ伝えることができます。
相手を崩す重い打撃などはこの「踵の押し込み」を意識するとやり易いでしょう。

重要なのは「位置」ではなく「ベクトル」である

ここで重要なのは、つま先か踵かという位置ではなく、「今、自分はどこで地面を押し込み、反発力を捉えるのが最適か」という目的意識です。
自分の体勢や動きの流れにより、どの部位を使って地面を押し込むのが最適なのかを感じることが重要なのです。

武道における威力とは、突き詰めれば「地面から受け取ったエネルギーを、いかにロスなく相手に伝えるか」に集約されます。

物理学の観点で見れば、私たちが発揮できる力 は、地面を押し返した力(作用・反作用)によって規定されます。

  • 地面を押し込んでいない状態 = 反発力を得られない。
  • 地面を正しく押し込んでいる状態 = 反発力を得られる。

たとえ足裏全体が地面についていても、ただ「乗っているだけ」では、地面は力を返してくれません。
逆に、見た目はつま先や踵などの一部で立っていたとしても、地面の奥深くをプレスする感覚があれば、強力なパワーを得ることができるのです。

「押し込み」を最大化する身体の仕組み

地面を効果的に押し込むためには、単に足裏に力を入れるだけでは不十分です。
以下の3つのポイントが連動している必要があります。

① 足指を伸ばす

足裏は「クッション」であると同時に「パワーの伝達器」です。
土踏まずがつぶれてしまうと、押し込んだ力が分散してしまいます。
足裏を「硬い板バネ」のように保つことで、地面からの反発を鋭く体幹へ伝えることができます。この時のコツは「足指を伸ばす」こと。

土踏まずのアーチを強くしようとするとどうしても足指を握り込みがちになりますが、こうすると指を曲げるだけになってしまいます。
反対に「指を反る」のも良くない動きです。これも指を反るだけの動きとなってしまいます。

その中間が「足指を伸ばす」動きです。
コツは足のアーチを意識すること

この、踵・母趾球・小趾球を結んだアーチを「足の甲と足裏側の両方を張る」
ようにします。

これは意外と難しいのですが、私も足指を伸ばすように意識してから、地面からの反発を明確に感じることが出来るようになりました。これは踵で地面を押し込む時も同様です。

② 地面の「奥」を突くイメージ

「地面の表面」を意識するのではなく、「地表から10センチ奥の地点」を突き刺すように押し込むイメージを持つと、身体の深層筋が起動します。
「地球の中心を押し込む」という壮大なイメージでも良いでしょう。

③ 股関節への往復ルート

上半身の重みを股関節に乗せて股関節から地面を押し込むように。
その押し込みに対する地面からの反発は、膝を通り股関節へ戻ってきます。
この股関節を通る往復ルートを感じることで、地面からの反発力は上半身まで届きます。

どのポイントを重視すべきか

この3つのポイントのどれを重視するべきでしょうか。
結局のところ、「その人の状態による」となるのですが、
私は①の「足指を伸ばす」です。
これによりつま先までを含めた脚を「一本の棒」のようにするためです。
なぜ棒のようにするのか。
皆さん、「地面を押し込み、その反発力をもらう」ときにバネをイメージしませんでしたか?
私も最初そうでした。バネが縮まることにより反発力が発生するような。
しかしそれだと一瞬、間があきますよね。
そうではなく棒を地面に押しこむのです。バネのように「たわむ」ことはありませんが、確かに反発力は発生しています。こうするとバネにはあった一瞬の間が出来ませんね。

棒を壁に押し当てても同様です。
棒が壁に当たり、それ以上押し込むことが出来なければ、壁からの反発力をもらっているということです。

地面を押し込む感覚を磨くトレーニング

地面を押し込む感覚を磨くのに適したトレーニングを2つ紹介します。

四股

通常の四股と同じですが、先ほどの3つのポイントを意識しながら行いましょう。つま先から着地するのがコツです。こうすることにより足指を伸ばしやすくなります。

四股踏みを詳しく知りたいならコチラ
万能エクササイズ「四股踏み」の押さえておくべき2つのポイントを解説!

壁押し

股関節の往復ルート感覚を磨くのに持って来いのトレーニングです。

壁を押した反発力を股関節に乗せて股関節から地面を押し込むようにします。次に押し込んだ反発力を股関節を通して上半身~腕に伝えましょう。

壁~腕~上半身~股関節~足~地面の奥~足~股関節~上半身~腕~壁のという力の伝達のサイクルをイメージしながらじっくりと壁を押しましょう。

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居着きとの違い

ここで居着きとの違いを考えてみましょう。

居着きにはいろんな考えがあると思いますが、ここでは「直ちに次の行動に移せない」とします。

では地面を押し込んだ状態は居着きではないのか?

答えは「居着きではありません」
なぜなら、この状態では常に地面からの力をもらっているからです。

この反発力を使えば直ちに次の行動に移すことができるということ。
逆説的に言えば「地面とのエネルギーのやり取りが止まった状態」が居着いた状態
であると言えるのかもしれません。

まとめ

今回の記事では「重心位置」についての私の解釈を紹介しました。

もしあなたが自分の立ち方に迷っているなら、一度「重心の位置」を忘れてみてください。
代わりに、「今、この瞬間に地面を強く押し込めているか?」を探ってみるのです。

そのポイントは
①足指を伸ばす
②地面の奥を突く
③股関節への往復ルート
でした。

四股や壁押しなどのトレーニングで、重心をどうやって足に流し、足のどこで地面
プレスすれば体が反発力を感じることができるか。いろいろ試してみてください。

重心は「置くもの」ではなく、地面を強く押し込む中で「流れていくもの」です。
この感覚を掴んだ時、あなたの武道は「位置の議論」を超え、
新たな一歩を踏み出すことが出来るでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたの身体創りの一助をなれば幸いです。

プロフィール
オワス

九州生まれ北海道在住1968年生まれ 
武道・武術などを通じて日本古来の文化に出会い、以来30余年にわたり身体運用や心身を健康に保つ方法などを学び日々の生活に取り入れ楽しくすごしています。
「この素晴らしい文化を少しでも多くの人に知ってもらいたい!」とこのサイトを立ち上げ情報発信しています。

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